LINEは1日10分以内に! SNSが引き起こす深刻な脳への影響
外出自粛で増えるスマホの使用時間
外出自粛で家にこもることによる弊害が出ています。
運動不足が与える影響も馬鹿にならないですが、PCやスマホに接する時間が増えることによる精神面への悪影響にも気を配る必要があります。
昨年11月に発売され、日本でもベストセラーとなっているスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書『スマホ脳』には、スマホに代表されるデジタル機器、及びそこで提供されるSNSサービスの「副作用」について最新の研究成果が報告されています。
「寝る前にスマホが手放せない人」は、眠れなくなるだけでなく、眠りの質も落ちます。
その結果、慢性的な睡眠不足に陥り、疲労感が取れない状態になってしまいます。
参照記事 ブルーライトで慢性的な睡眠不足に!?
SNSをチェックすればするほど「自信がなくなる」
ハンセン氏が憂慮しているもう一つのポイントがSNSと気分の落ち込みとの関連です。
「2千人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかりました。
この人たちが実際に孤独かどうかは別問題です。
孤独というのは、友達やチャット、着信の数で数値化できるものではなく、体感するものだからです。
ハンセン氏はSNSを用いることで、他人と自身とを比較する機会が増えることが影響しているのではないか、と考えています。
解決策はいたってシンプル
この問題の解決策はいたってシンプルです。単に、SNSの利用時間を制限すればいいのです。
米国では、軽いうつ状態の人のSNS利用時間を1日30分以内(1サービスあたり10分以内)と制限してみたところ、3週間後には精神状態の改善が見られたという報告もあります。
新型コロナの感染リスクを下げるために家にこもるにしても、その分だけPCやスマホと接する時間を安易に増やしてしまうと、別のリスクもあることを肝に銘じておきましょう。
“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!?
最近、医師や研究者の間で、スマホの使いすぎが原因で脳に異常をきたす人が増えているという指摘が相次いでいます。
スマホによる「認知機能の低下」・「脳過労」とも呼ばれています。
スマホが原因で脳過労に陥った人の脳画像です。
青くなっているのは、血流が減って機能が鈍っている部分。正常な時と比べると、明らかに機能の低下が広がっています。
脳神経外科の奥村歩医師によると、「認知機能の低下」・「脳過労」は、30代から50代の働き盛りの患者さんが、全体の4割を占めるに至っているということです。
LINEを使う子供ほど成績が悪い!!
2005年に、東北大学と仙台市の研究チームは「LINEなどのスマホアプリを長時間使うと成績が低下する」との研究結果を発表しました。
仙台市内の小5~中3の子供全員を対象に調査
調査は、東北大学と仙台市による「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」が実施したものです。
2014年4月に仙台市内の小学5年生から中学3年生全員である合計約4万3千人を対象に実施した生活・学力検査の数学の成績との関係結果を分析しています。
プロジェクトメンバーには「脳トレ」で有名な川島隆太教授も参加しています。
「LINE等を使う子供ほど成績が悪い」
調査結果によると、iPhoneなどのスマートフォンで「LINEなどの通信アプリを使用する子供ほど、自宅で勉強する時間が短く、成績が低下している」傾向が明らかになったと発表されています。
さらに、LINEなどの使用時間が長くなることによる影響は、勉強時間や睡眠時間よりも大きいことがわかりました。
「アプリの使用時間が長くなることで勉強時間や睡眠時間が減り、成績が落ちる」のではなく、「アプリの使用による影響で成績が落ちている」と考えられる、と発表されています。
因果関係の詳細などについての研究は現在も継続中とのことです。
スマホとの付き合い方、使う上での約束事を
調査グループは、子供たちが安全に、安心してスマートフォンでインターネットを利用するために、特徴やリスクについて理解すること、子供にスマートフォンを持たせる目的を明確にすること、使用に関する約束事を決めることなどを推奨しています。
「ジョブズ」が我が子のスマホ利用を禁じた理由
ここまで読めば、「ジョブズ」が我が子のスマホ利用を禁じた理由もわかるでしょう。
猫も杓子も「デジタル化礼賛」の世相に逆らうように、デジタル・デバイスの負の側面を記した「警告の書」が注目を浴びています。
なぜジョブズやゲイツは、わが子にスマホを持たせなかったのか。子どもも陥る「スマホ脳」。その震撼の実態を明らかにしていきます。
今や一種のインフラになった観もある。ほとんどの人がスマホが手放せなくなっています。
ニュースにSNS、ゲームに動画。通勤電車で誰も新聞や雑誌、本を手にせず、全員スマホに視線を落としている光景も珍しくありません。
何でもすぐに検索、道に迷えば地図アプリ……。
自分がそんなありさまなのに、スマホに張りつきっぱなしのわが子や孫を注意してみても、説得力はゼロでしょう。
そんなわれわれ日本人の前に、スウェーデンから『スマホ脳』(新潮新書)という衝撃の書が上陸しました。
膨大な実験・研究結果から、スマホをはじめとするデジタル・デバイスの人間への影響を解説しています。
著者のアンデシュ・ハンセン氏は精神科医でMBA(経営学修士)保持者で、人気科学ナビゲーターとしても知られています。
逆行する日本
日本におけるコロナの影響は、オンライン授業の実施へと及び、萩生田光一文部科学相が今年度中に公立小中学校の全生徒へタブレット端末を1人1台配布すると言明すると、10月には河野太郎行政改革・規制改革相が教育面でも、
「不要な規制はどんどん外していく。デジタル化できるところはどんどん進めていきたい」と発言。
ついには平井卓也デジタル改革担当相が萩生田文科相にこう提案しています。
「小中学校で使う教科書を原則デジタル化すべきだ」
平井デジタル相はこれまでの文科省の「デジタル教科書の使用は各教科の授業時数の2分の1未満に限る」とする指針を「全くナンセンス」と批判。
「教科書を何冊も抱えて移動するよりパソコン1台の方がいい」と述べました。
「脱ハンコ宣言」に始まる河野氏の「デジタル行政改革」の流れからすれば当然の発言にも思えますが、行政手続きと教育のデジタル化を同一視しているのだとしたら困りものです。
これは、認識が古いと言わざるを得ません。
『スマホ脳』が大ベストセラーとなり、著者のハンセン氏がテレビ出演に講演にと引っ張りだこになったこともあり、教育大国スウェーデンでは、むしろ子どもたちのスマホやタブレットの使用を制限する方向に向かっているのです。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズへの質問
2010年、アップルの創業者スティーブ・ジョブズは最初のiPadの製品発表会を開きました。
ここで、「インターネットにアクセスできる、比類なき、驚くべき、特別な可能性をもたらす」画期的商品だとジョブズは口を極めて絶賛しました。
そのしばらく後、ニューヨーク・タイムズ紙の記者がジョブズにこんな質問を投げかけました。
「自宅の壁は、スクリーンやiPadで埋め尽くされてるんでしょう?」
すると何とこんな答えが。
「iPadはそばに置くことすらしない」
ショックを受けている記者にジョブズは続けて、iPadはおろか、すべてのデジタル機器について、わが子のスクリーンタイム(視聴時間)を厳しく制限していると伝えたのです。
こうした態度をわが子に示しているIT企業トップはジョブズに限らない。マイクロソフトのビル・ゲイツも、子どもが14歳になるまでスマホを与えていません。
アップルの幹部トニー・ファデルはこう言っています。
「冷や汗をびっしょりかいて目を覚ますんだ。僕たちはいったい何を創ってしまったんだろうって。うちの子供たちは、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われるような顔をする。そして感情的になる。それも、激しく。そのあと数日間、放心したような状態なんだ」
フェイスブックの「いいね」機能を開発したジャスティン・ローゼンスタインなどは、「依存性ではヘロインに匹敵するから」として、本来は保護者がわが子の使用を制限するためのアプリを自身のスマホました。
ハンセン氏は言う。
「IT企業トップは子供にスマホを与えない」
科学作家の竹内薫氏も笑いながら言う。
「当然でしょう。スマホがどうして人を夢中にさせるのか、仕組みを知っている人間なら子どもに安易にスマホは使わせませんよ」
東大の物理学専攻でプログラマー、現在は子どもたちに英語からプログラミングまでを学ばせる最先端のフリースクールを運営する竹内氏までそう言うのだ。
放出されるドーパミン
人を夢中にさせる仕組みとは簡単に言えばこういうことになります。
そもそも人間の脳は、危険を察知する能力を高める方向で進化してきました。
その結果、危機を脱する行為をしようとすると“ドーパミン”というホルモンを放出します。
例えば、おいしそうな食べ物を前にしたとき、性的に興奮したときなどです。
太古の昔から脳は、飢餓から脱出せよとか、子孫を残せとかとわれわれに命じてきたわけです。
そして新しい知識を増やしたり、未知の何かに期待したりすることもまたドーパミンを増やします。
知識は危機の察知につながります。学校の勉強が嫌いという人は珍しくないですが、基本的に人の脳は新しい知識を歓迎するように作られています。
問題は、スマホはのべつまくなし、こういう刺激を人に与えてしまう点にあります。
ニュースサイトだろうとメールだろうとSNSだろうと、「新しいもの」に出会えば脳の“報酬システム”は作動します。
この仕組みを熟知して、利用しているのがゲーム会社やスマホメーカー、SNS運営会社なのです。
ハンセン氏によると、こうした企業の多くが行動科学や脳科学の専門家を雇っているそうです。
脳科学者の茂木健一郎氏も次のように言っています。
脳科学では、どんな色や形、動きが子どもたちの注目を集めるか、動画で見せる実験をしたりしますが、YouTubeに今溢れているのはそんな動画です。
現在のSNSやアプリで行われているのも同じこと。少しでも注目を集め、滞在時間を長くしようとしているわけです。
滞在時間はユーチューバーやサイト運営者らの広告収入に直結するものです。
SNSやアプリの開発者は人間の脳の報酬システムを利用しているし、脳はその性質上、それらから逃れられないのです。
このようにして、私たち現代人はまんまとスマホの虜となるわけです。
スウェーデンの調査では、現代人は今や平均1日4時間、若者の2割は7時間もスマホに費やしているそうです。
ハンセン氏は、実に1日平均2600回、われわれはスマホに触り、10分に1回手に取っていると言っています。
現在20代の若者は、80歳までの人生のうち5年をSNSに注ぎ込むという割合です。
普及率の低い日本ではまだそこまでではないとはいえ、同水準になるのも時間の問題と思われます。
ここまでの刺激物は人類史上、存在していなかったし、その悪影響はすでにさまざまな研究で示されています。
- 1日2時間以上のスクリーンタイムはうつのリスクを高める
- スマホ登場後、スウェーデンでは抗うつ剤使用者が9人に1人まで増加
- “心の病”の原因の一つである睡眠障害が若者では10年超で5倍増。20年で8倍増に
- 20カ国70万人の調査で10年前より子供の睡眠時間が減少していることが判明
- 5千人以上を調査した結果、リアルな人間関係に時間を使う人ほど幸福感が増し、SNSを使う人ほど人生に対する満足度が減っていた
- 10代(12~16歳)の若者4千人を対象にしたアンケート調査によると、SNSをよく使う子供の方が人生への満足感が低かった」
などです。茂木氏はこうも言っています。
「強制的にでもスクリーンをオフにする時間を持たなければなりません。特に、判断力の未熟な子どもほど、脳をハッキングするようなアプリや動画に容易に乗っ取られやすい」
置いているだけで、学習面への影響がある
まずは学習に最も必要な集中力について。スマホを持っている800人を対象に集中力を要する問題をやらせるという実験があります。
「スマホを別室に置いてきた」被験者と「スマホをサイレントモードにしてポケットに入れていた」被験者を比較すると、前者の方が成績がよかったという結果が得られました。
日本でも類似の実験が行われています。
モニター上に隠された文字を素早くいくつも見つけ出すという課題をやらせてみました。
被験者の半分は、自分のではないスマホをモニターの横に置き、触ってはいけないことになっていました。
残りの半分は、デスクの上に小さなノートを置きました。結果はノートを与えられた被験者の方が課題をよく解けていたという結果でした。
ただポケットに入れているだけ、置いているだけで、スマホは集中力をうばう
問題はスマホばかりではない。デジタル機器全般が記憶力に影響を与えているという研究もあります。
二つの大学生のグループに同じ講義を聴かせました。
片方のグループは自分のパソコンを持参し、もう片方は禁止されていました。
講義の直後、パソコンを使った学生たちは、もう一方のグループほど講義の内容を覚えていませんでした。
スマホを使いながらの学習だと、複数のメカニズムが妨げられる
こうした結論を受けて、英国ではロンドンなどのいくつかの学校で、スマホの使用を禁止しました。
生徒は朝スマホを学校に預け、下校時に返してもらうのです。
その結果はどうだったか? 成績が上がったのです。
この調査を行った研究者の試算では、9年生(日本の中学3年生)は1年間で1週間長く学校に通ったのに相当するほどの学習効果があったということです。
勉強するときに紙を使うこと自体にもメリットがあるのだろうとハンセン氏は指摘しています。
ノルウェーの研究者は、小学校高学年のグループの半数に紙の書籍で短編小説を読ませ、残りの半分にはタブレット端末で読ませました。
その結果、紙の書籍で読んだグループの方が内容をよく覚えていたそうです。同じ小説を読んだのにです。
子どもがどんどんバカになる
こうして見ると、教育のデジタル化は安易に進めるべきではないのがよくわかります。
しかし、今さらスマホとPCを扱えない国民を育てよというのも時代錯誤でしょう。
9歳の娘を持つ国際政治学者の三浦瑠麗氏は、こう言っています。
デジタル・デバイスを使いこなすことは現代においては必要不可欠ですから、私も娘にiPadを学習用に与えています。
ただ、それはあくまで通信教育用です。SNSやアプリを使うには準備が必要だと思うからです。
ネットリテラシーの習得ももちろんですが、もっと重要なのは子どもが“我慢できる能力”を持っているかどうか。
情報に対する欲求は物欲に近いと私は思っています。幼児期にその物欲との付き合い方ができていれば、自分にとって必要なこととそうでないことを見分け、情報に溺れることもないのではないでしょうか。
衝動を抑制し、報酬を先延ばしにする機能を持つ脳の前頭葉
衝動を抑制し、報酬を先延ばしにする機能を持つ脳の前頭葉という部位は、脳の中で最も遅く発達します。
25歳~30歳になるまでは完全に発達せず、10代ではまだまだ未熟であるために、脳の報酬システムが命じるままにスマホに耽溺してしまうことになります。
だからこそ、この「報酬を先延ばしにする能力」、平たくいえば我慢をする能力が人生を左右するほどに重要なのです。
すぐに新しい刺激が手に入るスマホをずっと手元に置いていると、この能力は育たない。子どもは欲望の赴くままに刺激に溺れ、どんどんバカになってしまいます。
では、どうすればいいのか。ハンセン氏は脅かす一方ではなく、同書では数多くの提案をしています。
いわば「スマホ脳」からの脱出法です。
その一例として、「スマホの表示をモノクロに」「スマホを寝室に置かない」「寝る直前に仕事のメールを開かない」などは、誰でもすぐにでも実行できるアドバイスかもしれません。
また、大人はもちろんのこと、子どもにとって有効なのは運動のようだ。毎日1時間程度であっても、運動をしている子どもは記憶力や集中力などのテストで好成績を収めたという結果が報告されている。
まずは自身の、そして子どもたちのスクリーンタイムをチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか?
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