悪口をいう人は不幸になる
なぜ人は、悪口、誹謗中傷が好きなのでしょうか?
明らかに相手に精神的なダメージを与える行為なのに、どうしてやめられないのでしょうか?
実は、悪口を言う人ほど「不幸になる」という科学的な根拠があります。
悪口を言う人の心理
アメリカの心理学者リオン家スティンガーが述べているように、人は他人と自分を比較してしまう傾向があります。
特に日本人の場合、集団の和を乱さないために、他人の顔色を伺う、他人の言葉や言動に神経をとがらせ、自分と比べてみるなどといった傾向が強いといわれています。
新型コロナの流行に伴って現れた「自粛警察」と呼ばれる人たちも、自分は充分にルールを守っているのに、それを守ろうとしない人がいるという怒りが行動の原因になっています。
つまり「他人と自分を比較してしまう心理」が根本の原因です。
人は、他人と自分を比べたときに自分が優れていると感じた場合、「優越感」を抱きます。
逆に、自分が劣っていると感じた場合は「劣等感」を抱きます。
劣等感は強いネガティブな感情なので、それを何とかして払拭したいという衝動に駆られます。
そしてそれを、悪口や誹謗中傷という形で発散したくなるのです。
悪口や誹謗中傷をいうことで、相手を貶めることができます。
自分と相手との比較において、相手を引きずり下ろすことによって自分の価値を相対的に高めることができるので、それによって劣等感を緩和しよういう心理が働いてしまうわけです。
最近、「自己肯定感」という言葉をよく耳にしますが、自己肯定感が低い人ほど自分に自信が持てません。
そういう人は自分と相手との比較において劣等感を持ちやすく、悪口を言う傾向があります。
自己肯定感が高い人は、自分の考え方や行動に自信を持てます。
他人に何かを言われても、自分の考え方や行動は影響を受けません。
相手と自分を比較することもなければ悪口を言うこともありません。
こういう風に考えると、もしあなたの周りに悪口を言うのが好きな人がいても、「自己肯定感が低い人だ。かわいそうな人だ」と考えて上手に聞き流すことができます。
人はどうして悪口が好きなのか?
人が悪口を言うのは、悪口がストレス発散になるからです。
ただし、悪口がストレス発散になるためには、他人から「その気持ち分かる!」といった同調をしてもらうことが必要です。
そして、悪口は自分の中にあるコンプレックスの裏返しでもあります。
例えば、「あの子って、明るいのはいいけどちょっとうるさいよね」など、自分が本当はうらやましいと思っている相手の性格を悪口として吐き出したりします。
相手への悪口というねじれた形でも、自分のコンプレックスを吐き出した時に誰かに同調してもらえると、コンプレックスが受け入れられた、認められたという気持ちになります。
はたから見ると、悪口を言う人もそれに同調して盛り上がっている人も、お互いのコンプレックスを慰め合っているだけなのですが、当人たちは吐き出せたスッキリ感と同調心理によって得た安心感に包まれているため心地良いのです。
悪口を言うのは「防衛機制」という心理が働くから
悪口を言うときの心理は、精神医学者のフロイトが提唱した「防衛機制」という心理メカニズムの側面から解き明かすことができます。
「防衛機制」とは、自分自身の心理的な葛藤や、外部から攻撃を受けた時に感じる苦痛を回避するために、無意識的に生じる心の動きを指します。
以下に、その「防衛機制」のメカニズムの例を挙げます。
同一化
「同一化」とは、自分一人では不安なため、自分以外の人と自分が融合し一体感を持とうとすることです。
これはまさに、悪口を言う人がよく使う「ねえ、あなたもそう思わない?」と同意をうながしてくる言葉によく表されています。
投影
「投影」は、自分の欠点を受け止めることができないため、自分以外のものに責任を転嫁することをいいます。
例えば、人の顔に難癖ばかりつけている人は、実は自分の顔にコンプレックスを抱いているといった現象などが投影にあたります。
逃避
「逃避」とは、現状が苦しいため、他のものに心的エネルギーを注いで現状から回避することです。
悪口とは少し異なりますが、クレーマーの心理は逃避行動である場合も多く、本当に商品やサービスそのものの改善を求めているわけではないといわれています。
クレームや悪口にエネルギーを注いで、本来向かい合うべき何かから逃げているだけということです。
昇華
「昇華」とは、物事を受け入れ欲求を発散させることです。これは、自虐ネタなどを織り交ぜながら悪口を言う人に見られる心理状態です。
しかし、昇華は上手に使わなければ周りから「やめんどうくさい人」に見えてしまう可能性があります。
例えば、自分の容姿に自信が無い場合に「私って容姿が悪いじゃない?」と返答に困るような自虐をいった後に「私はあの人みたいに美人じゃないから、内面くらいは磨いておかないと思ってるの」といったような、遠回しな悪口などが、それに当たります。
悪口は「依存症」である
悪口が好きな人はなぜそれをやめられないか?
それは「悪口は依存症である」と考えると、納得がいきます。
誰かの悪口を言うと、快楽に関与するホルモン「ドーパミン」が放出されます。
ドーパミンが出ると楽しい気分になります。だから、悪口を言うことは基本的に楽しいことなのです。
しかし、ドーパミンは麻薬のような脳内物質でもあり、一度放出されると「より大きな刺激」を求めるようになります。
つまり、悪口の回数を増やしたり、より過激な悪口を言わないと、新たにドーパミンが出ず、楽しい気分になれなくなってしまうのです。
その結果、悪口を言うことが癖になって、なかなかそれを改善できない状態に陥ります。
悪口を言えば言うほど深みにはまってしまう。これはアルコール依存症や、薬物依存症と同じ原理です。
このように考えると、「悪口は依存症」といっても、遜色ないでしょう。
多くの人は、悪口は「ストレスの発散になる」と思っているでしょうが、実際は逆です。
悪口はストレスを増やします。最悪の場合、寿命を縮める危険性もあります。
東フィンランド大学の研究によると、世間や他人に対する皮肉・批判度の高い人は認知症のリスクが3倍、死亡率が1.4倍も高い結果となりました。
批判的な傾向が高ければ高いほど、死亡率は高まる傾向にあったそうです。
また、悪口を言うと、コルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールというのは、ストレスを感じたときに放出されるストレスホルモンです。
先ほどドーパミンが放出されるといったので快楽を得ていると思いきや、悪口を言っているときは同時にストレスも感じているのです。
「返報性の法則」
心理学の法則で「返報性の法則」というのがあります。人は誰かに親切にされたとき、「その親切をお返ししないといけない」という気持ちが湧き上がる心理です。
「好意の返報性」を上手に使うと、信頼度を高め、人間関係を深めることができます。
しかし、残念なことに世の中の多くの人は、「悪意の返報性」を使っています。
ネガティブな感情に対しては、人はネガティブな感情を返したくなるものです。
「倍返しだ!」とやり返してしまうのが、まさに「悪意の返報性」。
そして人に悪口を言うと、やはり「悪意の返報性」で悪いものが帰ってきます。
「本人がいないから悪口を言っても大丈夫」と思っていても、「よく悪口を言う人」と周りにネガティブな印象を植え付けてしまいます。
いつ自分に矛先が向かうかわからないので、周りの人たちは悪口を言う人を心から信頼しないでしょう。
悪口を言う人への対処法
ここまでで、悪口は言う人自身の防衛のために行われていることが分かったと思います。つまり、あなたが原因ではない場合が多いのです。
そんな悪口に対処する方法を考えましょう。
相手を俯瞰で見る
前述したように、悪口を言う人の本質は、コンプレックスの裏返しや過剰な自己防衛心理です。
つまり、自分の弱さから目を背けたいがために、他人を利用しているということなのです。
そう考えるとかわいそうな人だと思えてきませんか?
悪口を言われている時はどうしても感情が自分のつらさに向いてしまいがちですが、悪口を言う人を俯瞰で見て、相手にしないというのが最善の方法です。
逃げる
逃げる勇気を持ちましょう。悪口を言う人に対して面と向かって抗議するという方法もありますが、こちらが敵対心を燃やすと相手がヒートアップする可能性もあります。
派閥に属していると集団の力を利用されて面倒なことにもなりかねません。
その人から完全に離れることが難しい場合は極力接点を少なくしましょう
上司に伝える
悪口を言われ続けていると「自分に非があるのだろうか」といった自責感情が出てくる場合があります。
特に、自分に自信が無かったり、仕事上で業務に慣れていなかったりするとそのように思ってしまいがちです。
しかし、行き過ぎた悪口はハラスメントに該当する可能性もあります。
第三者であり、かつマネジメント権限を持つ人に相談してみましょう。
直接伝えるのが難しい場合は話しやすい先輩に相談し、そこから上司に伝えてもらうといったやり方も考えてみてください。
愚痴を吐かせてもらう
たまったストレスを吐き出して共感してもらうと心がスッキリし、思考が前向きになります。
誰かに言いたい愚痴は誰にでもあります。
自分が吐き出したら、今度は相手の愚痴も聞いてあげればよいのです。
心理カウンセラーやキャリアカウンセラーなど、専門家に聞いてもらうのでも構いません。
独りで抱え込もうとせずに、ネガティブな感情は吐き出していきましょう。
悪口から卒業する方法
健康を害し、信頼を失う悪口をやめるにはどうしたらいいでしょうか?
いちばんの近道は「自分を褒める」ことです。悪口を言う人は、自己肯定感が低い人です。
自己肯定感が高まれば、悪口は自然と減っていきます。
気に入らない相手をおとしめるのではなく、自分を高めることによって、相手と自分のギャップを埋めればいいのです。
自分のささいな成功を独り言でいいので、褒めてみる。
褒めるのが無理なら、ネガティブをポジティブに置き換えるだけでもいいでしょう。
自分の中でポジティブな言動を積み上げることで、自己肯定感が高まり、怒りや嫉妬、不充足感が満たされ、ネガティブな感情を抑えることができます。
その結果、悪口や誹謗中傷から卒業できるというわけです。
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